ニュース&コラム | 2020-01-20

1億ドル以上の大型調達「スーパージャイアントラウンド」の減少とベンチャー市場の動向

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Jason D. Rowley,January 15, 2020

1億ドルを大金ではない、と思う人はいないはずだ。念のため確認したかったのだが、間違いないだろう。しかし、スタートアップ界隈では、未公開企業が1度の資金調達で多くの資金を調達することは(まだ比較的まれではあるが)定期的に起きることので驚くべきことではなくなってきている。

結局のところ、1億ドルという数字は独断で決められたものではあるが、ベンチャーキャピタルのラウンドを「スーパージャイアントラウンド(1億ドル規模のラウンド)」、つまり宇宙で最も巨大で煌々とした星に例えて表現する時の目安として一般的に使用されている。

Crunchbaseのデータによると、この記事を執筆している時点で、2019年には455件のスーパージャイアントラウンドでの資金調達が行われ、報告されたベンチャーキャピタルの取扱高は1,080億ドル近くに達した。2018年の467件のスーパージャイアントラウンドの資金調達と、総額1480億ドル近くのVCの取扱高からは減少している。これらの数値は、新しい資金調達に関する履歴データがCrunchbaseに追加されたり、既に追加されている調達ラウンドの経過が詳細に明らかになるにつれ再分類されたりすると、今後、わずかに変化する可能性がある。

Crunchbase Newsでは、これまで、このスーパージャイアントラウンドについて多く取り上げてきた。私たちは、投資金額が9桁、10桁、11桁にも上るような大型の資金調達を追い続けて執筆してきた最初の企業だと自負している。 (Crunchbaseのデータを見ると、2013年前後に大型の資金調達が始まったことがわかる。)また、この大型の資金調達はレイトステージに限った話ではないことも確認している。そして、地理的な傾向や変化についても、もちろん追い続けている。

パワーシフトのバランス

この、スーパージャイアントラウンドのような傾向は、世界の2大経済大国である米国と中国から始まった。しかし、中国経済の不安定さと、従来ベンチャー投資が盛んに行われてきた中心的な地域以外からスタートアップの新興市場が台頭したことにより、世界のベンチャーキャピタル市場における「力のバランス」は変化している。

2020年1月初旬から収集された集計データは、2つの特徴的な傾向が続いていることと、1つ別の傾向が起きていることを示している。

1つ目は、2018年と比較して、2019年のスーパージャイアントラウンドにあたるようなVCによる投資の影響は、未だに大きいものの減少傾向がみられること。2つ目は、米国および中国以外でスタートアップの新興市場が継続的に成長している中で、中国のベンチャーキャピタル市場が衰退したこと。そして3つ目は、スーパージャイアントラウンドが浸透するにつれて巨額の資金調達事例が増えることで、新興市場への投資金額も増えていること。

スーパージャイアントラウンドにあたる投資金額は、2019年に報告された投資金額の約47%を占めたことが分かった。(後日、更にデータが追加される可能性があることは念のため記しておく。)これは2018年と同様の比較をした場合、2018年の51%から減少している。一般的に良く知られているVCから資金調達が出来た件数は、500件にも満たないことは驚くべきことだが、しかしそれも最近の市場の傾向であると言えるだろう。

世界全体でのVCによる投資額を合算すると、中国のスタートアップが2018年の投資額の約25%を占めている。これは、Crunchbaseのまとめているデータによると史上最大の金額となる。しかしながら、2019年には17%と低下した。スーパージャイアントラウンドの減少は中国のスタートアップ市場の減少でもあり、中国の経済成長が減速していることも意味している。

ここまでに取り上げたデータから、スーパージャイアントラウンドにおける投資金額の推移と共に、他の市場が現状維持されていることが分かる。2017年以降、スーパージャイアントラウンドが占めている投資金額の割合を見れば、米国または中国以外の市場でスタートアップが調達した資金が大半を占めていることが分かる。この傾向が2020年まで続くかどうかは不明だが、勢い(および地理的多様性)は、今後の新興市場の方が、成長性があり有利である可能性が高いことを示唆している。

米国の強気の経済サイクルに遅れて、世界の他の地域は成長性を示している。ラテンアメリカ、オーストラリア、アフリカ、ヨーロッパのスタートアップ市場は、資金調達の金額と取引件数の推移が右肩上がりで伸びている。

今後数年間で世界の主要経済が減速したとしても、世界のベンチャー市場で小規模の資金調達活動が一夜にして無くなってしまうわけではない。米国は、ベンチャー市場に占める割合が縮小する可能性があるとしても、今後しばらくの間、単一で世界最大のベンチャー市場であり続けることには変わりないだろう。

出典:crunchbase news